父の死をきっかけに真の歯科医を目指す
はっきりした目標が持てないまま通学していた大学時代、そんなとき父が癌になり、私の人生に大きな変化が起きました。まずはそのことをお話ししたいと思います。
父は歯科医で、自宅兼用の医院で朝から晩まで一生懸命働くタイプでした。さらに地域の住民として、町のためにどぶ掃除や廃品回収もしていたのです。私はそんな父の背中を見て育ちましたが、当時は父がなんでそんなに働くのか理解できずにいました。
私が大学3年生の時、父は皮膚癌になりました。その後、症状は悪化し、仕事道具でもある右手親指を切断することになります。
その時、大学病院の優秀そうな医師たちは、冷ややかな態度で簡潔に告知したのです。
でも、その中でたった一人、「なぜ切断しなくてはならないのか、どういう手術になるのか」ということを、絵を書きながら丁寧に説明してくれた医師がいました。その医師からは、大切なものを失うことへの配慮と優しさが感じられました。
「自分が臨床の現場に出たら、こんな医師になりたい」
初めてそう思いました。
大学6年生の夏、父に死が訪れました。父が闘病していた期間は医院を閉めていたのです。それにもかかわらず、お葬式には以前通院していた患者さんたちが来てくださり、弔問の列は私の目の前で長く長く延びていきました。
「これが父のしてきた仕事、父の足跡だったんだ」
父のプロとしてのプライドが、大勢の患者さんたちに伝わっていたことに感動し、涙があふれました。そして自然と、「父の意志を引き継ごう」と決心していました。
※ 上記の出来事は、『ふりかえれば愛だった!涙の実話30(コスモトゥーワン出版社)』に掲載されました。
※カンボジア、日本での診療の様子
探し求めていた治療との出会い
八重歯が目立ち、奥歯も乱ぐいでがたがた。
実はこれが矯正する前の私の歯並びです。
大学の講義では「歯並びが悪いと虫歯になりやすく、さまざまな病気の原因にもなる」と教わりました。それで矯正が必要ではないか、と思ったのです。
そこで大学の矯正科の歯科医に相談してみました。その歯科医は口の中を少し見ただけで「キレイになるよ、とりあえず歯を抜こうか」と気軽に言いました。衝撃的でした。
一般的な矯正は健康な歯を抜くことから始まります。それで隙間を作って歯並びを整えるのです。
「健康な歯を抜いて矯正をしていいんだろうか?」
そんな疑問を持ったままでは歯を抜く気持ちになれません。ひとまず諦めることにしました。
そして、歯周病学の講義では、歯を抜くのは最後の手段と教わりました。「自分の歯を一生使う」ために、抜かないように、抜けないように、懸命に残す努力をするのです。この考え方には共感することができました。
大学を卒業してから、「歯を抜かない矯正治療法」を知りました。そのとき日本では、まだごくわずかな人にしか知られていなかった治療方法です。「健康な歯を抜かないで、歯並びを自然な姿に戻していこう。見た目だけではなく、機能性も重視しよう」という考え方は、まさに私が長年探し求めていたものでした。
自分の歯もこの方法で矯正してみました。そこで「根本的な原因を除去すれば、歯を抜かなくても矯正はできる」ということを、身をもって体験することができたのです。その後、一生懸命に技術を修得し、やがて臨床経験は1600件を超えるまでになりました。
私の想い
一般的な歯科医院では、みんな同じガイドラインで治療します。でもこれでは無駄な治療や検査が多く、来院回数も増えることになってしまいます。そんな状態で満足する治療ができないことを、あなたは知っていますか?これは専門家の間では周知のことなのです。
銀座みゆき通りデンタルクリニックでは、「歯の形が人それぞれ違うように、治療のペースも個々に合わせよう」と考えています。
医師と患者さんがきちんとコミュニケーションをとることができれば、その方に合ったゴールをはっきり定めることができるのです。そうすれば無駄な治療をすることもありませんよね。だからカウンセリングを通して、あなたの悩みや思いを聞かせてほしいのです。
「なぜそうなったのか?という原因を理解し、患者さんが本当に求める治療を探し出していきたい!」これが私のこだわりです。
健康的な体作りを目指して、私とスタッフの思いが少しでもあなたの力になれることを願っています。
銀座キッズデンタルパーク開院
2014年、銀座キッズデンタルパークを開院いたしました。
なんとか歯が悪くなる前に、食い止められないものか。考えを深めれば深める程、虫歯にしない歯周病にしない「予防的アプローチ」が大切であることは明白になりました。そして、より低年齢からのお口の中の環境作りをして行こうと決意するに至りました。
虫歯のない世界を作りたい。歯並びや咬み合わせの不具合が起きる前に食い止めたい。
一生、自分の歯で過ごして欲しい。
健康で生き生きとした子供たちを育てたい。
『銀座キッズデンタルパーク』は、色々な想いのつまった、予防に特化した新しいタイプの小児歯科・矯正歯科です。
どんなに歯科医療が発達しようとも、天然の歯に勝るものはありません。決して、歯の修復を第一目的とするために我々歯科医療従事者が存在するのではなく、歯を守ることを最大の目標とし、信念としていきたいと思っています。
そして、真に歯と身体の健康を願う方々と共に歩んでいけたら幸いです。