「歯を大切に。」ずっと昔から言われてきたことです。それが、歯並びを矯正しようとしたら、一転。「健康な歯を抜かないと治らない」「健康な歯を削らないと治らない」こんなことを言われたら、おかしいと思いませんか?
もともと人間の歯の寿命は長く、大切にすれば長持ちします。6歳臼歯と呼ばれる奥歯が1本なくなると、噛む力は35%も落ちるといわれています。
何でもおいしく食べられるのは、自分の歯があってこそ。噛む力は、生きる意欲につながります。
見た目の歯並びを治す歯列矯正のときに、生えている健康な歯を抜くといわれることがあります。すでに矯正歯科にでいわれたことのある方もいるかもしれません。『余分な歯を1本抜いて、余裕を作りましょう。そうすれば、並びます。』ということです。
これは一見すると、正しいように思えます。でも、ほんとうに抜くしかないのでしょうか?
矯正で健康な歯を抜かない選択
健康な歯を抜くとき、抜く対象となってしまうのは、ほとんどの場合、前から数えて4番目の第一小臼歯(だいいちしょうきゅうし)です。前歯の見た目にも影響が少なく、大臼歯と呼ばれる奥歯ほどどっしりとしていないので、抜いても影響が少ないと思われているためです。
特に、日本人には八重歯(やえば)が多く見られます。八重歯のとなり、つまり前から3番目(犬歯)の1本奥の第一小臼歯を抜いて、その抜いたスペースに八重歯を押し込めて並べようということです。もし、上下左右で同じことをすれば、見えている健康な歯を4本抜くことになってしまいます。たしかに、歯の本数を減らせば歯は並ぶでしょう。
このように歯を抜くことを、歯科の専門用語では便宜抜去(べんぎばっきょ)、あるいは便宜抜歯(べんぎばっし)といいます。便宜とは「ある目的や必要なものにとって好都合なこと」です(大辞泉より)。便宜抜歯は、歯を並べるために好都合だから歯を抜くという意味になりますね。
しかし、便宜的に抜かれてしまう歯も、かならず意味があって存在しているのです。
非抜歯矯正との出会い
私自身、歯学部の学生の頃、矯正専門医から「健康な歯を抜く」ようにといわれた経験があります。私は歯並びがデコボコだったので、頭の中では抜かなければいけないのかなと思っていました。しかし、歯型をとる、レントゲンを撮るなど、ごく簡単な検査・診断の結果、「抜く」といわれたことに大きな疑問をもちました。
その後、まったく違う理論・手法で、私は健康な歯を抜くことなく矯正治療を受けることができました。
抜かない矯正の治療内容
その方法は、日本ではまだ少ない患者様、一人一人の個性を重んじた『完全なオーダーメイド』の矯正治療法でした。現在、私たち銀座みゆき通りデンタルクリニックでは、私自身の歯を矯正した理論・手法を使って、患者様の健康な歯を抜かない矯正治療をしています。
今、私が『健康な歯を抜かない矯正治療』を患者様に実践できているのは、紛れもなく、私自身の歯並びがガタガタで咬み合わせも悪かったおかげです。さまざまな矯正理論を見直し、実体験として勉強することができました。私が患者として持った疑問が、患者様の大切な歯を守るための、非常に大きな財産となっています。そして、歯科医となって現在に至るまで、一貫して、健康な歯を抜く矯正治療は行っていません。
もう一度、大切なことをいいます。歯は一度抜いたり、削ったりして無くなるともう元には戻せません。「自分の歯」1本いっぽんは、代わりのない大切なものだということを真にご理解していただけると幸いです。
このような方は、ご自分の歯を大切にしたいと考えている方だと思います。きっと、銀座みゆき通りデンタルクリニックで行っている『健康な歯を抜かない非抜歯矯正』で、きれいな歯並びになる希望がもてると私は思います。
銀座みゆき通りデンタルクリニック 院長 古田博久