皆様こんにちは!歯科衛生士、後藤です。
今日もMFTの部屋をご覧いただきありがとうございます。早速ですが、質問です。
皆様の唇は何もしていない時、閉じていますか?開いていますか?または周りの方、ご家族の方はいかがでしょうか?
今回のテーマは、以前のブログの記事、第1弾に挙げました、当院での『 MFTの目標 』の2つ目、 ”唇を閉じる” に関した内容でお話していきます。なぜ唇を閉じることが大事なのか、そしてMFTは現代社会において最も必要な予防歯科及び予防医療であることを、より多くの方々におわかり頂けたらと思います。
ポカン口 「Is Your Mouth Closed?」
唇を閉じると聞くとそんな簡単な事?と思われるかもしれません。自然にできる方や意識しないとできない方、寝ている間は口が開いてしまう方、などと人それぞれではないでしょうか。
または、小さいお子様をお持ちのお母様、お父様は、お子様をよく観察して見ると、常に口が開いている事にお気づきになるかもしれません。
私は口が開いた状態をポカン口と言っています。
先日6〜7歳児、50名程の集団を参観する機会がありました。その時児童は静かにお話を聞いているシチュエーションでした。
よく観察をしてみると、なんと半分くらいの児童はポカン口になっていたのです。子どもの場合、口が大きく開いているので、とてもわかりやすいです。
しかし、大人の場合は数ミリしか開いていない事が多く、一見閉じているようにも見え、見分けづらい場合がほとんどです。ポカン口ではないから自分は大丈夫と思っていても、数ミリ開いているだけで、口は開いている状態に変わりはないのです。
この記事を読んで頂いたあと、周囲を観察してみてください。どのくらいの方々が唇をしっかりと閉じることができているでしょうか。
口が開いていることは口腔筋機能障害のサイン
当院のMFTでは口を常に閉じている事を一つの目標とし、訓練をしていきます。口を閉じる時にはその為の顔の筋肉が働いています。簡単に感じるかもしれませんが、幼少期から癖がついていると大人になってもなかなか簡単に治るものではありません。小さい頃から口を閉じる習慣にする事が最も重要なのです。
口が開いている、すなわち唇が閉じられない状態は口腔筋機能障害(こうくうきんきのうしょうがい)といい口周りの筋肉が正しく機能されていない症状の1つとして挙げられます。顔にはそれぞれのパーツを動かす為のそれぞれの筋肉がたくさん交わり合い存在しています。
唇を閉じる為のいくつかの筋肉が使われずに衰えていくと審美的(見た目)、健康(呼吸、睡眠、食)、学習能力、歯のトラブル(虫歯、歯周病、口臭、不正咬合)など多くの弊害が出てきます。
今回は顔、骨格の変化についてお話していきます。
口を閉じましょう 「Close Your Mouth」
化粧品の広告、雑誌の表紙、映画のポスターを見てみると、唇があいていている写真が多く使われています。メディアでは唇があいた状態を“色気”や “魅力的”として宣伝されているのでしょう。
確かにそういった写真は雰囲気がよく表されていてとても素敵ですよね。
しかし、本来唇は常に閉じているべきなのです。
口が開いているべき時というのは・・・
- お話をしている時
- 笑顔の時
- 物を口に含む時 ※噛んでいる時は閉じています
- 歯磨きなど、口の中を清潔にしている時
それ以外は唇は自然に閉じているのが理想的です。1900年初頭、アメリカでは、鼻呼吸・口を閉じる為の補助用品として、チンストラップが開発され売り始められました。アメリカではその頃から口を閉じる事を推進されていました。
日本ではいびき防止グッズとして販売されている様です。チンストラップはかみ合わせに悪影響がでる場合があるので、ご使用の際にはよく注意し、専門家に相談すると良いでしょう。
当院でも口を閉じるお助けアイテムをご使用いただくことがあります。
ポカン口の顔の特徴 「Open Mouth Posture」
ではなぜ、口が閉じられず開いてしまうのでしょうか。口が開いてしまう理由は大きく分けて2つあります。1つは、口呼吸です。
鼻呼吸ができずに口呼吸になると当然口を開けないと呼吸ができませんよね。口呼吸をしてる方は必ず口が開いています。
2つ目は鼻呼吸をしているけど、幼少期からの口を開けている癖が続いていて唇が閉じられない(口を閉じる筋肉が緩んでいる)場合が考えられます。鼻呼吸と口呼吸について詳しい記事がありますのでこちらをご覧ください。
そして口が開いていて口周りの筋肉が衰えている顔には典型的な特徴があります。口が開いて口周りの筋肉が弛緩していると顔全体の筋肉は緩み、下方に垂れ下がってきます。そして顔の骨格は下方に延びるように成長していきます。理想的な下顎の骨の成長は前方向、横方向であり、下方向や後方ではありません。
しかし、口が開いた状態で成長期を過ごしてしまうと顎の正しい発達の妨げになる原因に繋がります。
もちろん骨格の成長異常は、口が開いていることだけが原因ではありません。現代のライフスタイルや文明の発達により、加工食や流動食の増加など、様々な環境変化を遂げ、「徐々に噛まなくてもよい生活」へと変化し、人類の顎の退化という現象が起こりました。顎が小さくなったり、歯並びが悪くなったりするのはその大きな「環境変化」も原因として考えられるのです。
「なぜ歯並びが悪くなるのか」という根本的な原因を探ると、顎の成長と関係があります。
進化生物学者のお話によると、狩猟採集時代(数百万年前)の民族の頭蓋骨に歯並びが悪いのを見たことがない。また、親知らずがないのも見たことがないと言われています。
皆様は親知らずが生えていますか?
親知らず( 智歯 )は、上下左右の1番奥に1番最後に生えてくる歯のことです。現代では4本正常に生えてくる場合もあれば、もともとないことや、顎が小さく生えるスペースがない為埋もれたままの状態である場合があります。余談ですが「親知らず」という呼び方は昔は存在しませんでした。
そもそもなぜその歯は親知らずという名前の由来なのかというと、親知らずとは、「本当の親の顔を知らない」という意味で、人によっては生えてこない場合がある経緯で呼ばれ始めました。
いつかの時代から呼ばれるようになった親知らず、文明変化が示唆されていますね。
顎の良い発育のためには、流動食やファーストフードばかりではなく、栄養バランスの良い食品をよく噛んで食べる重要性を考慮していくことがとても大事になります。
食に関しては銀座キッズデンタルパークの栄養士の食育コラムも是非ご覧ください。
口呼吸・ポカン口危険サイン 「The Red Flag Of Incorrect Mouth Posture」
ここで一度、セルフチェックをしてみましょう。皆様はいくつ当てはまるでしょうか?
- 自然な状態の時、上唇と下唇が離れて口が開いている
- 下唇が顎に向かって垂れ下がっている。唇にたくさんシワがある
- 唇が乾燥しカサカサになっている
- 唇の皮が硬く分厚い
- くまができている
- 頬が垂れ下がっている
- 朝起きると喉がカラカラに乾いている
- 前歯が飛び出している
- 笑うと歯茎がたくさん見える
- 食べているときにくちゃクチャ音がなる
MFTの検査内容にはこういった顔の細かい部分も観察しながら行います。自分自身ではなかなか判断が困難な場合もあるので、一度専門家に診てもらうのもいいでしょう。
”Children whose mouth breathing is untreated may develop long,narrow mouths,high palatal vaults,dental malocclusion,gummy smiles,and many other unattractive facial features, such as skeletal class II or class Ⅲ facial profiles.”
(口呼吸が治されていない子供は、長くて狭い口、高い上顎、歯の不正咬合、ガミースマイル、および三級骨格または二級骨格の顔貌など、他多くの魅力的ではない顔の特徴を発達させる可能性がある
“Yosh Jefferson,DMD,MAGD,Mouth breathing:Adverse effects on facial growth,health,academics,and behavior “
また口が開いていると姿勢にも影響が出ます。
92人(8〜10歳児)を集めた、ある実験では、口呼吸(口が開いている)30人中、12人が頭が前のめりになり猫背の重度の悪い姿勢であり、鼻呼吸(口が閉じられている)62人には重度の悪い姿勢の子はひとりもいなっかったという研究結果が出ています。
Mouth breathing and forward head posture: effects on respiratory biomechanics and exercise capacity in children
J Bras Pneumol. 2011;37(4):471-47
姿勢が悪くなると、呼吸・筋肉・血流の低下、また骨格の成長に反映されます。ポカン口は全身の問題に大きく関わってくるのです。
MFTで健康に 「Importance Of Myofunctional Therapy」
ポカン口をそのままにしていると、将来には、顎や顔面の痛み・偏頭痛・首、肩の問題・睡眠時無呼吸症候群などに悩まされます。MFTで口周りの筋肉を正しく鍛えることは健康の面でとても重要です。できるだけ早くに癖を治しましょう。
統計データによると、顔、顎の発達の90パーセントは7歳までに終えているそうです。よって、約7歳〜10歳まで口呼吸やポカン口の子供達はすでに骨の発達が正しく誘導されていない為、歯の矯正治療が必要になる可能性が高くあります。
必要に応じ、矯正治療で永久歯(大人の歯)が生えるスペースを確保し、MFTで習癖を変え、顔を正しく成長させ、歯並びを整え、美しい顔にし、健全な呼吸ができるように成長を誘導することが最善です。子ども達の長期的な健康や健全な睡眠と呼吸を考えると、成長期に治療する価値が大いにあります。だからといって、10代、20代と、骨の成長を終えた年代でもまだ諦めないでくださいね。
間違った習癖を変えることは年齢に限らず一生を通してとても大事です。
そして、大人になってもMFTをうけるメリットは沢山あります。アンチエイジング、リフトアップ、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)などの予防としてもとても効果的です。
当院では専門的なMFT(口腔筋機能療法)が受けられます。ご自身やお子様、またはご家族の方、MFTにご興味のある方は是非お問い合わせください。
以上、MFTの目標の2つ目、唇を閉じる大切さについてでした。
最後までお読み頂きありがとうございました。
歯科衛生士/マイオファンクショナルセラピスト 後藤
A=X+Y+Z, X is work. Y is play. Z is keep your mouth shut.”
“Aが成功とすると、その計算式は次の通りである
A=X+Y+Z, Xは仕事。 Yは遊び。 Zは口を閉じること。’’
’’Albert Einstein アルバートアインシュタイン’’