2019年10月23日

MFT(口腔筋機能療法)とは?

皆様こんにちは!歯科衛生士、後藤です。
MFTの部屋をご覧頂きありがとうございます。
MFTの部屋では口の周りの筋肉(唇、頬、舌)に関係する健康のお話をお伝えしていきます。
私は現在本場アメリカのMFTを勉強中です。(MFT発祥の地、アメリカで活躍するアメリカ人の歯科衛生士/マイオファンクショナルセラピストSarah Hornsbyさんからマイオファンクショナルセラピスト認定講座を受けております。)
そんな最新MFT情報を皆様にお届けしていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。

皆様は MFT または 口腔筋機能療法 という言葉を聞いた事はありますか?難しくて馴染みのない言葉ですよね。インターネットで検索をすると大体は歯科医院と関連されて出てくるのではないでしょうか?そこで今回は意外と知られていないMFTについて(大まかになりますが)紹介していきます。

History MFTの歴史

MFT は約100年前、1910年代に米国の矯正歯科医 Rogers AP により提唱されました。その後様々な発展を経て1970年以降、日本に臨床応用が開始されました。現在、日本では主に矯正歯科や小児歯科でMFTが実施されています。
さて、その MFT ( Myofunctional Therapy ) 口腔筋機能療法 とは何なのか?

Myofunctional Therapy MFT とは?

MFTとは『歯を取り囲む筋肉の働きを良くするトレーニング』です。英語で Myofunctional Therapy の略語で日本語だと 口腔筋機能療法 と言います。

鍛える筋肉

MFT概要
具体的にどこの筋肉かというと唇を開けたり閉じたりする筋肉と舌の筋肉です。(舌は筋肉でできているのです!)口の”筋トレ”といった感じです。身体を鍛えるメリットは何となく思い浮かびますよね。 
ではなぜ口周りの筋肉を鍛えるの?と疑問に思うかもしれません。日常で舌の動きや無意識の時の舌の位置を意識して考える事はあまりないかと思います。姿勢を正しなさいと言われても舌の位置を正しなさい!と指摘される事はないですもんね。
まだまだ認知度が低いかもしれませんが口周りの筋肉を正しく鍛える事は QOL(Quality of life, 生活の質)と ADL(Activities of daily living, 日常生活活動)の向上に繋がります。特に舌の働きは生活をしていく中でとても大事な役割を担っているのです。

舌の大事な役割

舌は生きる上で必要な呼吸・睡眠・食に深く関係しています。舌は味を感じる役割や食べ物を噛む助けをし、飲み込む時に働いてくれます。そして噛む為の大切な機能の中の一つが 『 歯 』 です。口の筋肉、舌の筋肉が正しく機能されずに衰えていくと歯並びにも影響がでてくるのです。歯の並びは、舌、唇、頬 等の筋肉からいつも力を受けています。この力のバランスによって歯並びや骨格が変化していくのです。(成長期に最も影響を受けると言われています。)では口周りの筋肉のバランスが崩れる事によってどんな事が起こるかご説明します。

口周りの筋機能不足で起こる健康のトラブル

1. 不正咬合

Dental malocclusion

不正咬合とはかみ合わせが悪い状態の事を言います。

2. 矯正治療後の新たな不正咬合

Orthodonticrelapse

矯正で正しいかみ合わせに治した後でも舌の力により歯が動かされてしまう可能性があります。

3. 頭蓋顔面の成長異常

Craniofacial developmental disoder

骨格の成長に影響を及ぼします。骨格性の受け口 開咬 などが挙げられます。

受け口には大きく分けて二種類あり骨格性の受け口(下顎の骨が長く前突している状態)と歯性の受け口(下の歯の列が上の歯の列より前突していて下顎が長く見える状態)があります。

骨格性の受け口は矯正治療だけでは治せません。下顎の長さを短くする方法としては外科手術となります。その一方で歯性の受け口の場合は矯正治療で治す事ができます。

よって、骨格性の受け口にできるだけならないようにする事が重要になるのです。

4. いびき

Snoring

いびきが起こる原因として舌の位置と気道に深い関係があります。

5. 睡眠時無呼吸症候群

Sleep apnea syndrome

眠っている時に呼吸が止まる病気の事を言います。

4番目のいびきとリンクしているものでこれも舌の位置と動きに関係しています。MFTと重要な関わりがあるので後に詳しくブログでお話していきますね。

6. 虫歯、歯周病 、口臭

Dental cavity,Periodontal disease,Bad breath

唾液は虫歯、歯周病、口臭予防の強い味方

口で呼吸する事で口の中が乾きやすくなります。さらに、舌や頬の動きが悪いと、唾液の流れが悪くなり、汚れがたまりやすくなるのです。口の中の乾燥や唾液の停滞は、ばい菌が繁殖するのを手助けしてしまいます。

口が乾くと唾液の作用が損なわれる

口臭にはいくつか原因がありますが、ニオイは唾液の量で決まります。

唾液には抗菌作用 ・浄化作用 ・歯の石灰化作用 ・消化作用 ・潤滑作用 ・味覚作用といった働きがあります。口で呼吸する事により口の中が乾き、唾液の量が減りこれらのメリットを受けられず口臭の原因を作ってしまうのです。

ここまで大きく6つに分けて説明しましたが口周りの機能がきちんと働いていないとその他にも沢山の問題を引き起こす原因となります。口周りの筋肉だけでこんなにも身体に影響を及ぼす可能性があるのです。私達はMFTで口周りの機能を改善させる事によりこれらの問題を予防、改善を目指していきます。

日本では歯科衛生士がメインとなり指導にあたっていますが、アメリカではカイロプラクターや言語聴覚士、耳鼻咽喉科とチームを組んだり、歯科医療従事者以外の幅広い分野でMFTが行われているのです。それでも現状はまだまだ認知されていないとアメリカのMFT専門家は言っています。

ではもう少し掘り下げてMFTの具体的な内容をご説明しますね。

MFTの4つの目標

Goal Of Myofunctional Therapy

当院のMFTでは4つの目標をもとに取り組んでいきます。

1. 鼻呼吸

Nasal Breathing

鼻呼吸とは、鼻で吸って鼻から吐く呼吸をする事です。鼻呼吸を常に行える様にします。

2. 唇を閉じる

Lip Seal 

安静時や寝ている間も口は閉じた状態でいます。

3. 舌の正しい位置

Correct Tongue Posture

安静時や寝ている間、正しい舌の置く位置の確立。

4. 正しい嚥下(えんげ)の仕方

Correct Swallowing Pattern

嚥下とは飲み込みの事を言います。飲み込む時の正しい舌の動かし方の確立。

この4つの目標が(起きている時、寝ている間と共に)正しく身につくと成長期の子供の骨格の発達は正しく誘導され、将来起こりうる問題の予防につながります。もちろん成人の方が始めても遅くはありません。子供から大人まで対象となるトレーニングなのです。

4つの症状|Four Core Symptoms

ではどうやってMFTが必要か見分けるのでしょうか。

1. 舌癖(ぜつへき)異常な嚥下(えんげ)パターン

Tonguethrust swallowing patten

舌癖とは舌の癖の事を言います。
舌が歯を押し出していないか、飲み込む時の舌の動きの状態はどうか等を見ます。

2. 舌の位置

Low tongue posture

舌の位置が口の中の天井にあるか、下の歯寄りに下がっているか。
舌の位置でも細かく部分的に観察していきます。

3. 口呼吸

Mouth breathing

口から息を吸って口で吐いている呼吸の仕方をしているかどうか。

4. 唇が開いている

Open mouth posture

無意識の時の口がポカンとあいてしまっている状態かどうか。これらの症状をよく観察し診断をしていきます。自分や家族が気づかない事もあるので専門家の判断も必要です。4つの内一つでも相当する場合はMFTが必要というサインになります。実は4つで分けてありますがそれぞれの症状は全て繋がりがあるのです。皆様はいかがでしょうか?ご自身や、ご家族、身の回りの方を良く観察してみて下さい。きっと思っている以上にこの4つが出来ていない方がいることにお気づきになるのではないでしょうか。1番大事なことは気付く事です。まずそこから始めてみて下さいね。

4つの目標と症状については今後ブログで詳説していきたいと思いますので是非チェックしてくださいね!
最後まで読んで頂きありがとうございました。

歯科衛生士 後藤